少女伝道師・1

   三十四人だ。全員、よく覚えている」
 彼は、そう語った。
 フリーライターである私が、彼に   そう、仮にY氏としよう   インタビューを申し込んだのは、知り合いの伝で、あるエロ雑誌の記事を請け負ったことから始まる。
 その知り合いは、「友人にロリ関係の強者がいる」と私に教えてくれた。私もちょっとその方面にはハマりかけており、マンガのような人物がいるというのも信じがたかったので、実際に逢って話を聞いてみることにした。記事も、そのインタビューを元にして書けばいいだけであり、楽な仕事であった。
 最初は、そう思っていた。
 Y氏は、三十代半ばであるそうだが、もっと若く見え、二十歳だと言われればそうとも見える、年齢不詳の容貌をしていた。それは短く刈った髪と、武道で鍛えているという厚い胸板のためであったかもしれない。その割には手は妙に小さく、若々しかった。女性の手と言われても通じる綺麗な手であったのを、よく覚えている。レンズの小さな眼鏡が、その奥で私を観察しているような眼を微妙に隠し、こちらからは彼の表情が完全には読み取れなかった。
 しかし、私は不思議であった。別段、Y氏は美形というわけでもない。しかし、容姿からすれば特に不細工というわけではなく、まあ標準的な顔立ちであろう。そこに特徴的なものは特に見当らなかったし、感じられなかった。付き合う女性からすれば、自慢できるようなハンサムでもないが、かといって「悪趣味」と言われるほどひどくもない。連れて歩くほどには自慢できるタイプではないが、一緒にいると安心できるタイプ、だろうか。彼の付き合っている、または付き合ってきた相手が、二十歳ほども年下の少女ばかりであることを考えれば、それは納得できる。それとも、彼には、少女を惹きつける何かがあるのだろうか? もしくは、少女たちを安心させるテクニックとか   もしそのようなテクニックがあるのなら、私も是非教わりたいものだ。
「最初は、友人の妹だった。私は大学に入った年で、最初の夏休みに、友人のアパートに遊びに行った時だった。仮にTとしておこう。Tの妹は中学二年、転校した友人の元へ遊びに行った帰りに、ついでにTの元へ寄ったらしい。美奈子という名前だった」
 Y氏は、まるで昨日見たばかりの映画かビデオのように、私の質問に応えて、その体験を話し始めた。最初であるから、もう十三年近く前になるはずなのに。
   美奈子は、私に好意を抱いているのが明らかにわかった。美人、というより、可愛い少女だったから、私も一目見て気に入った。その時の私は、まだ普通の健全な青年男子だったから、『こんな娘を恋人に出来たらいいだろうな』などと考えていたものだよ。今ではありえない話なのだがね」
 Y氏は苦笑のような、自嘲のような笑みを浮かべ、一息吐く。
「……美奈子はその日Tのアパートに泊まって、それで実家に帰る予定だった。しかし、翌日私の元にTが来て、彼女を一晩泊めてやってくれないか、と頼んできた。何故かといえば、その当時、Tは高校時代からの付き合いの彼女がいて、その日突然泊りに来ることになったからだ。ただ、Tも妹が二・三日泊まり掛けで遊んでいきたい、と言い出すとは思っていなかったようで、急遽こうでもせざるを得なかったらしい。
 私は、表向きは気軽に引き受けたが、内心神に感謝したよ。彼女と一晩、誰の邪魔もなしに過ごせるとは思ってもみなかったからだ。
 それに、私のところに泊まると言い出したのは、美奈子の方だった。彼女も、密かにそれを期待しなかったではないらしい。となれば、私としては、彼女の期待に応える義務があるのではないか   そう思うことにした」
 Y氏はそこで、喉を潤すように、コーヒーカップに一口つけた。
「……切っ掛けは簡単だった。シャワーを浴びた後の彼女が、自分から私を誘惑してきたのだ。私は、それに迷う事無くのった。
 彼女の身体は、思った以上にしなやかで、なめらかで、瑞々しかった。胸こそなかったが、そのか細さが却って彼女の魅力だった。コケティッシュ、という言葉を、私は初めての体験で知ってしまった。だからこそ、今でもその魔性に操られ続けているんだがね。
 今でも思い出す。初めての女が、五歳も年下の少女で、しかも自分から私に身体を開いたのだ。もちろん彼女は処女だった。しかし、昨日出会ったばかりの私に、そうやって身体を開くことに後悔はなかった、と後で言っていた。
 どんな感じだったかって? 君は女を知っているか? なら、それを思い出してくれ。熱く、それでいて柔らかで、蠢く粘膜に差し込まれていく、自分の一部分。そこへ全身の快楽が集中するんだ。もちろん、初めてのセックスでそんな状態に女性器が成熟しているはずがない。今思えば、きつく、硬く、とても蠢くなどという感覚とは程遠い、全力の締め付けだけがあっただけ、とも思える。
 だが、彼女の場合は、それだけじゃない。普通の女なら、そう、これは後で比較してわかったことだが、美奈子の後に付き合った女とは、人間の女とセックスしている、快楽を分かち合っている、という   そうだな、同胞意識とでも言うか、そんなものを感じながらのセックスだった。しかし、気持ちいいにはいいのだが、何か常に物足りなさを感じていた。彼女から付き合ってくれと頼んできたから、彼女は私に気に入られるために色々してくれたよ。バックでも、フェラチオも、SM、アナル、何でも応えてくれた。しかし、それでも、美奈子の魅力には勝てなかった。
 美奈子の   いや、少女の魅力は何だかわかるかね? あの小さな身体で、私のモノを精一杯受け入れようとするあの一生懸命な表情。涙を流しながらも、それでも私のペニスを、彼女は受け入れるんだ。私は、そんな彼女の要望に応えて、『無理矢理』犯すんだ。まだ男を知らない無垢の割れ目に、やっと指が入るぐらいの割れ目に、その数倍も太い肉棒を無理矢理ねじこむ。痛みに顔を顰めながら、それでも、彼女はそれを望んでいる。この征服感は、やってみなければわからないんだよ」
 Y氏はいつしか、口調には熱を、目にはわずかに「狂気」を湛えながら話していた。
 そこで彼は、我を忘れかかっていることを知り、苦笑と共に一度口を閉じる。
 私はそれを見て、今まで半信半疑だった体験談を、徐々に信じる気になってきた。
 なぜなら、Y氏の眼には、「本物」を語る光が見えたからだ。
 私も様々な人間を見てきたが、本物は眼の光が違う。特に、エロ関係の「本物」は、狂人に近い光を持っている。いわゆる「強者」とは確実に一線を画す、求道者というか、そう、宗教の教祖のような雰囲気があるのだ。
「……彼女とは、最終的に一年ぐらいの付き合いになったかな。その間、美奈子とは一週間か二週間に一度、私のアパートか、近くのホテルで密会していた。
 彼女には、色々教え込んだよ。フェラチオも、アナルセックスも覚えさせた。右の乳首にはピアシングもしたし、私のしたいことは全部試した。それに、彼女の身体の変化を、私は克明に覚えている。少し盛り上がり気味の、生育途上だった乳房が、身体を重ねていくうちに膨らみ、丸みを帯びて、別れる少し前には、大きくはないが完成された形になってきていた。手の平にちょうど納まる、いい形をしていた。ヴァギナも、多少襞が発達してはきたが、色付きもほとんどなかったし、最初は硬く滑らかだった膣内も、柔らかでうねるような感触になって、調教の成果も十分に出ていた。
 そうだな、今思えば、私は美奈子に夢中になっていた。セックスでの主導権は私にあったが、来るたびに私は彼女に何かしら、服やアクセサリーなどを買い与えていたし、食事やホテル代、交通費も全て私が出していた。まあ、元々中学生に負担させるような性質のものではないがな。
 彼女が高校受験で逢えなくなると、自然と私たちの関係は消滅していった。私も、同じ大学で同級生と付き合うようになり、それからしばらくは、そんな少女とも無縁だった」
 しばし、沈黙。再びカップに口を付けたのち、Y氏は再び口を開く。
「……二人目は、偶然そうなった。もし、私があの時何か理由を付けて断っていたら、今の私もなかっただろう。
 ああ、済まない。何のことか、順を追って説明しよう。
 美奈子と別れて一年は、大学の同級生としばらく付き合っていたが、私が彼女の身体以外に興味を示さなくなると、彼女の方から別れ話を持ち出してきた。これ以上、私の傍にはいられない、とね。私は別に彼女を責めはしなかった。彼女の方から付き合いを申し込んできて、ちょうど私が飽きた頃に、勝手に離れていってくれたんだ。私にとっては好都合だったよ。欲を言えば、せめて私が次の『少女』を見つけるまで待っていてくれれば良かった、と思いもしたがね。まあ、大人の女を思う存分楽しんだと思えば、残念がるような事ではなかった。
 ああ、そうだったな。それは、また夏の話だ。私の出会いは、圧倒的に夏が多い。それも、夏休みだ。しかし、意識的に夏休みという時期を狙うようになったのは、大学を出てからだ。
 その当時から、私は少々武道に凝っていてね。深夜、もしくは朝早くから、近くの公園で毎日のように訓練したものだ。
 夏休みといえば、朝のラジオ体操が定番だ。私が訓練していた公園でも、夏休みに入ると、毎朝小学生や近所の爺さん婆さんが集まってきてね。私は、人に見られずこっそり何かをするのが好きだったから、当時は大体朝五時ぐらいから訓練を始めて、人が集まる頃には引き上げるようにしていた。
 だが、町内会の会長だかの爺さんがそれを知っていたらしく、ちょうどラジオ体操の係になっている人がしばらく用があって来られないらしく、私に代理を頼んできた。私は面倒ではあったが、別に断る理由もなかったし、全員引き上げた後でまた訓練の続きをすればいいと思って、とりあえず引き受けた。
 そこで、私は二人目の、加奈子に出会った。
 加奈子は小学五年、十一歳だった。あの歳は、自分の身体の変化もさることながら、セックスに対する興味も人一倍強いものだ。特に加奈子は、オナニーも覚えて、同級生の誰よりもセックスに対して知識もあり、興味も強かったそうだ。
 ラジオ体操の後、私が一人残って訓練を再開すると、加奈子の方から声をかけてきた。今まで疲れ果てたような中年のオヤジだったのが、これは加奈子の評だが、まあまあイケているお兄さんに代わったというので、興味が湧いたらしい。
 当の加奈子はというと、ちょっとキツめの眼が印象的な、成長の早い少女だった。ブラをつけるほどではなかったが、胸も明らかに他の同級生の少女よりあったし、身体つきもやや丸みを帯び始めてはいたが、まだ子供らしいスレンダーな体型だった。
 しかし、彼女は脚がすごく綺麗だったな。特に膝のラインが。町中で女子高生の脚を見たことはあるだろう? 私はあの不自然な茶髪や日焼けが嫌いだが、それ以上に、美しくないラインの脚を露出しているあの連中に腹が立つんだ。そういう眼で観察していると、脚のラインの美しさというのは、膝の美しさだということに気が付いた。今度、君もその点に注意して観察してみるといい。
 加奈子の望んでいたとおり、私はすぐに彼女と打ち解けた。彼女は、最初から非常に挑発的で、私の部屋に来るようになると、何かにつけて私を誘惑した。最初、私はそれに気付かないふりをして、次に何をしてくれるのか、楽しみにしながら見ていた。
 しばらくして、近くの川で花火大会があり、私は加奈子と、その友達と一緒にそれを見物することになった。加奈子の友達は、彼女の影響か、少なからずセックスに興味のある娘ばかりで、なかなか可愛い   そう、加奈子よりも   娘もいた。まあ、その娘の事はまた後程   
 彼は、これからが本格的な体験談になる、と前置きした。
「河川敷には人がごったがえし、誰もが空の花火に注目している。また、音が少々の声もかき消してくれるし、夜だからちょっと物陰に入ってしまえば、何をしているのかなどわかりはしない。スリや痴漢、覗きは花火大会には必ず出掛けるというから、そういうシチュエーションも多い。そして、君の想像どおり、私もそこで加奈子に初めて手を出した
。  加奈子もそれを期待していたようで、拒みはしなかったし、屋外の、人がこんなにも多いそのすぐ近くでそのような行為に及んでいる、という緊張感、罪悪感、開放感、期待感などがごちゃまぜになって、言いようのない興奮状態になっていた。だから、私が少し刺激しただけで、加奈子はあっという間にイッてしまった。
 もちろん、一度イッたからといって、それでやめるわけはない。加奈子の友達からも離れ、少し会場から離れた川辺で、私は加奈子の身体を開発していった。しかし、そこでは最後の行為にまでは至らなかった。それは後の楽しみということで、そこでは、加奈子に快感を刷り込んでおくだけにした。
 それは、翌日には劇的な効果となって現われた。加奈子は、オナニーだけではどうしてもその快感が再現できず、私に昨日の続きを求めてきたのだ。
 私は、そこで初めて加奈子を犯した。最初は痛がっていただけの加奈子だったが、夜まで犯し続けると、もう快楽の虜と言っても差し支えなかった。オナニーで慣れていたせいか、思ったほど出血もなく、事のあとの治療も比較的楽だったから、何とか彼女の親にはばれずに済んだようだった。br  それからしばらく、加奈子はラジオ体操に顔を見せなかった。それはそうだろう、初体験で九回もすれば、体調を崩してもおかしくはないだろうから。
 四日目に、加奈子は再び顔を出した。体操が終わると、加奈子は待ちわびたように、私を求めた。初体験の傷は完全には治っていなかったが、それでも以前のような激しい痛みはないようで、ほとんど快楽の中で、加奈子は何度も絶頂を体験した。私のテクニックというより、加奈子がまだ慣れていない上に敏感であったからだと思う。
 それからは、加奈子は毎日のように私の部屋に現われて、セックスをせがんだ。私も、加奈子の求めに応じて彼女を抱き、一日をそれで終わらせることもしばしばあった。が、私はこの関係が暴露する可能性を忘れてはいなかった。加奈子もそれは考えていないではなかったようだったが、私に言われて、初めてそれに気を付けるようになった。加奈子は毎日でも私の元へ来たかったようだが、一日置きより短い間隔で来ないように私が言っておいたので、一・二日置きに来るだけになった。
 私は加奈子にも少しづつ、色々仕込んでいった。まずはフェラチオを覚えさせ、次にアナルを覚えさせた。特にアナルは気に入ったらしく、冬が近付く頃には、ほとんどアナルセックスだけになっていた。拡張を繰り返したものだから、最終的に、細い缶ジュースぐらいなら何とか入るぐらいにまで広がっていたかな。私のでは無理だが、加奈子の小さな手なら入るほどになったから、それで病み付きになったんだろう。
 夏休みの終わり頃、加奈子は一人、友達を連れてきた。睦美というその少女は、私が以前に目を付けた、加奈子より可愛いと思った少女だった。彼女は加奈子の親友で、加奈子から私の話を聞かされて興味を持ったらしく、加奈子の誘いに乗ってみたらしい。
 そこで私は、睦美の目の前で、加奈子とセックスしてみせた。フェラチオも、アナルセックスも実践してみせた。が、あろうことか、睦美はあまりの刺激の強さに失神して、失禁までしてしまった。
 その始末をするために、私と加奈子は睦美を脱がせて、縛り上げた。同時に加奈子は、自分を何枚も撮ったポラロイドで睦美の恥ずかしい姿を何枚も撮り、睦美が目を覚ますのを待った。
 目覚めた睦美がそれを見せられて、どういう反応をとったか、想像はつくかい?」
 Y氏は、おかしそうに笑う。
「哀れなぐらいに、睦美は怯えていたよ。私はそれを見ながら、自分にこんなにも残酷な一面があったことを初めて知ったよ。加奈子は面白そうに睦美の反応を見て、最後には私に身体を開かせるように仕向けた。清楚で無垢な少女が、自分から陰裂を広げて、私を受け入れる、と涙ながらに言うんだ。こんな状況で、彼女を放っておけるとおもうか? 私は睦美の要望どおり、犯してやったよ。
 まずは指と舌で、睦美のヴァギナを解してやった。加奈子のように、自分で準備できる訳ではないので、丹念に舐め、少しづつ膣口を指で広げてやる。それだけで二回イカせると、睦美の股間は愛液を腿まで流すようになった。睦美は快楽で半ば失神状態だったが、私が挿入すると、その痛みで意識をはっきりさせた。
 加奈子の時と同じように、睦美も痛がったが、私は睦美の口をガムテープで塞ぎ、そのうえで犯しまくった。もちろん、加奈子と違い、自分から望んだわけではなかったので、三回でやめたがね。その時には、睦美は少し切れていたかもしれない。一週間後、再び加奈子が睦美を連れてきたときには、彼女はすっかりセックスに対する抵抗はなくなり、加奈子と一緒に私を求めるようになっていた。私も、二人目の『玩具』をすっかり気に入って、加奈子と入れ代わりに睦美と遊ぶようになって、毎日の遊びには事欠かなかった」
 そこで、彼と二人きりだった部屋に、ノックの音に次いで、コーヒーの替えを持ってきた一人の女性が入ってきた。
 「少女」と呼べる年齢ではなかったが、なかなか美人だった。歳は二十ぐらいか  Y氏の表向きの恋人か、それとも結婚しているのだろうか?


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