同人道(その6)
・2001年(平成13年)・その3

・9/1

 そろそろ我が家にも「ブロードバンド」がやってくる。
 例の「Yahoo!BB」へ申し込みをしたのだが、今月中には開通するであろう見通しがついたのである。
 さて、これで困ったこともある。今CGマシンとして使っているマシンをADSL用に、それで新しいマシンを購入して新たなCGワークマシンとする予定であったが、なんだかんだでマシンセットアップが遅れている。
 一番の原因は資金面である。今やGHzマシンが当たり前になったはいいが、どのくらいのものを用意しておけば十分なのか、どーも見当がつかない。いや、速ければ速い方がいいに決まっている。しかし、問題は「どのくらいのマシンなら、2年ぐらいそのまま/メモリ追加程度でやっていけるか」である。
 この新マシンが稼動開始したら、コミケで初売りされた(はず)の「ComicStudio」を導入しようかと考えているからである。
 同人向け漫画製作ツールとしては、初めて「漫画製作」に特化されたCGツールであるため、告知時点から非常に期待はしていた。「パワートーン」とか、同人作家をターゲットにしたようなツールはあったが、結局はPhotoshopのプラグインであり、Photoshopの性能に左右されてしまう(とはいえ、Photoshopをマンガ描くのに使ってるなんて日本だけだって)。しかもPhotoshop本体が実売十万近くする。VerUPでさえ2.5万とか取られる。そんなんそうそう買ってられん。
 そこで、どうせ漫画でDTPに使うなら、専用のツールの方がやりやすいのは確か。原画から印刷まで、一本でシームレスにサポートしたツールは、まさに世界初である。
 こいつぁ「買い」だな、と、オンラインで出ていた告知でスペックを確認する……予想では、ぺん2-300ぐらいを予想していたが、ぺん(または互換)400以上……まあ仕方あるまい。グラフィックツール言うのは重いもんやさけ。メモリ128M以上、これは予想範囲内。つーか128Mじゃ足りないだろう。十分な速度環境を保持したければ512M以上というのが、現在の漫画DTPの推奨環境だ。デフォルト256Mだろう。
 ……が、これはどうか。OSの項。Me、2000はまあまんま使うしかないが、「W98SE+IE5.0以降」……ってなんでIEよ?

 さて。これで話は一層ややこしくなる。
 IE言うたら、今やブラウザの8割を占める、PC標準ブラウザである。ここまでするのに、MSは「ドギタナイ戦略」を行使し、ライバルであるネスケをマイナーブラウザに追い込んだ。まあそれはここでの本題ではない。
 問題は、このスペックを見た瞬間、このツールの開発環境が浮かび、しかも開発者の「セキュリティ思想の欠如」が露呈してしまったことである。

 ではその点を解説すると。
 IEは、一般の新聞にも報じられた「マクロウイルス」のゲートにもなっているブラウザである。
 正確に言うと、IEは「マクロウイルス」のターゲットではあるが、マクロウイルスが発動するためにはOfficeシリーズが必要である。Officeに搭載されたVBAエンジンが、マクロウイルスを発動させるからである。
 IEは「NT/2000サーバ(+IIS)」と組み合わされたときに、破壊的なウイルスを簡単に自分のマシンに呼び込む。また最近では「Webウイルス」によって、IEを使っているパソコンクライアントのシステムに、簡単に破壊的命令を流すことができるという報道があったばかり(8/29付、IPA報告)。
 そーんーなー危険なブラウザを使わなきゃ使えないってーのかよ、このツールは。つーかどこに使ってんだ?

 IEに多数の、塞ぎきれないセキュリティホール(安全性欠陥)があることは、IEが出た当時から、実情を知る技術者の間ではずーーーーっと警告し続けられてきたことである。それを日本のバカメディアどもが、MSという「スポンサー」の圧力に屈して、「IEは最高!」「Officeはゴイスー、これ使わない奴はバカ!」みたいな論調で提灯記事しか書かないもんだから、知らない初心者は「ああそうか、じゃあこれ使えば全てオッケーね」と思うだろう?
 実際、この危険性を知らない開発者も多い。というか、「ソフト開発しててそんなことも知らねーのかよ」ってとこなんですけど。
 確かに、スタンドアロンツールであれば、セキュリティは考えなくてもいいかもしれない。ただ、オンラインツールでそれを考えなかったら、どこで何をやっても、結局安全性はおざなりになったままである。
 もちろん、IEでなければ安全、かと言えば、そうとは言えない。対抗するネスケにもセキュリティホールはあるし、安全性や安定性を売り物にしているJavaブラウザのHotHavaにだって同じ事が言える。lynxやOpera、その他のブラウザだって言えることだ。
 ただ、IEはそんな中でも、飛びぬけて「穴が多い」ことで有名なのである。しかもその他のブラウザメーカーは、常に穴をふさぐ努力をしているが、一番シェアを取っているブラウザがいつまでも独走状態で一番穴が多いっちゃーどーゆーこったいね? 普通ブラウザ言うんは、操作性やらなんかより安全性を売りにするん違うんかいね?
 と、ここで一人主張してもMSが体質を変えるわけではないが、言わないよりはマシであろう。
 しかし、なんで一般のユーザーは、MSの体質を「おかしい」と思わないんだろうか? だって普通、ソフトが悪い場合は、ソフトのメーカーに「なんとかしろ」って言うだろ? それを自分の責任じゃなくて、バンドルしたハードメーカーに何とかさせてるんだよ? 企業としておかしかーないか? バンドルしてるハードメーカーは、Windowsの卸売りしてるだけで、共同開発してるわけじゃなかろ? それでなんで「全部ハードの問題です」とか言いきれるわけ? しかも、それをなんで「おかしい」って思わないわけ?

 ……とにかく、MSに関しては「ここを改善しろ」って言いたいことがありすぎていかん。それを言い始めたらテキストでフロッピーが100枚埋まるよまったく(ちなみに、小説単行本一冊のテキスト量は、200Kバイト程度です)。

 話がそれたので戻すが、「ComicStudio」を使ってみようかと思ったところで、この仕様を見て、俺は思いっきり引いたわけよ。
 この仕様で、開発環境は知れる。MS純正のVisualStudio。しかも特殊機能使いまくりであろう。でなければIE必須なんてことにはならない。そんな機能を使うって事は、Windowsのバージョン互換性などあんまり考えてない、頭良くないプロジェクトリーダーが指揮してるか、セキュリティのことなど考えたこともないアプリケーションプログラマ上がりのSEが指揮してるか、その双方であろう。
 IEは、それをエクスプローラに統合させたせいで、「あるだけ」でウイルスを呼び込むように出来ている。使ってなくても、バックグラウンドでIEを呼び出し、そこをゲートにして侵入する、という方法が使用できるのである。ComicStudioの「IE必須」という仕様が容認できないのは、このためである。
 こうならないためには、統合を切っておいて、さらにIEはデリートするしかない。統合を切ると少しだけ軽くなるし、何より安全性が高くなる。IEをデリートしても、統合さえ切っておけば機能上一応問題はない。ブラウザもネスケなど、別のを使えばいい。

 ツール自体は使ってみようという気はまだあるので、この際CGマシンを新規購入して、ネットワークから切り離して使うことを考えねばならない。ネット環境さえなければ、IEを使っていてもまあ安心だからである。
 どちらにせよ、複雑なツール新しいツールが使えるのはバージョン2から、というのがソフト業界の鉄則であるからして、使い込まれてバグがそこそこ枯れるまでは待たなければ、ちょっと使えるかどうかの判断もできない。
 しかし、利便性を前面に押し出して安全性を無視したツールやアプリは、もう勘弁してもらいたいものである。クローズドシステムだけで使うならともかく、外へつながる環境で使うアプリには、特殊なOS依存コーディングをしてもらいたくない。特にWindows依存、IE依存なんて、現在のブロードバンド時代のインターネット環境では危なっかしくて仕方がないのだから。
 ほんと頼むよ。MS以外にまでこんなことされるとは思わんかったわ。

・9/8
 ADSLが来た!
 我が家もついにブロードバンダーの仲間入りじゃよ。

 7月初頭、例の激安ブロードバンド、Yahoo!BBへ申し込みをして2ヶ月。ついにこの連絡が来た。モデムが送られてくるので、設置して接続を確認してくれ、と。
 やー長かったねぇ。

 とはいえ、Yahoo!BBは結構色々トラブル抱えてるようだ(どこでも同じなんだろうけど、サポートが貧弱)。非公式掲示板には、「接続できない」とか「速度が出ない」とか「セキュリティは大丈夫か」とか、「メールはいつになったら使えるのだ」とか、しまいにはお前の言い方は技術的におかしいだのそこの解釈はどーたらこーたら、自分の専門だからって知識をひけらかしながら相手の揚げ足取り合戦のようなのまで展開されてる(俺が言うな^ ^;)
 まあそれはいいさ。どちらにせよ、こいつを繋げる前に、ルータを買ってこなければならん。LANカードやケーブルも。本格稼動はそれからや。

 現在、我が家のメインマシンはW98SEである。しかし、次のマシンはW2000ワークステーションにする予定。9xシリーズよりはセキュリティレベル高いし壊れにくいし、現状使ってるソフトも限られるんで、ま、いいかなーと。どうせこいつはスタンドアロンだけど。
 で、今までのメインマシンを通信用に、旧通信マシンであった98をバックアップ通信マシン(モデム)兼テキストマシンにして、新たなマシンはネット繋がずにCGワークマシンにする。
 前項で書いたように、ComicStudioを使うなら、インターネットはそのマシンではご法度である。ルータ通すとはいえ、IEっつー脆弱な、むしろウイルスをくらいやすいブラウザを使わねばならないのである。
 私はインターネットへ接続して以来(たまたま^^)ネスケ派なので、IEのクソみたいな情報を聞くたびに、「あああんなもん使わんで良かった〜」と思うのみです。もちろんOutlookなんて危険なクソメーラーも使ってませんよ。あんなもん使ったのは富士通に行ってたときだけよ。ダメだね富士通も。昔からMSベッタリでさ。セガみたいになるぞ。

 どうも最近、文章を書くとMSツールの出来の悪さばっか書いてしまうので、ちょっと話題を変える。
 最近、HTMLで出来る簡易アクセス制限法を思いついた。誰かやってるかもしれないが、上手く出来ればフリーソフトみたいな形で公開しようかと考えている。出来たらね。

 (追補:やっぱりありましたが、どれもこれもシェアウェアで、しかも高い。DESとかRSAとか、本格的な暗号ツールばっか。そんなのにする気はないし、もっと簡単な暗号だから。つってもシーザー法(カエサル法)みたいな簡単すぎるのじゃないよ。)

 ここにはちょっとした暗号を使うのだが、この暗号というやつ、結構昔から考えられてきている。軍事用の通信には、必ずこれが使われている。まんま話してても、必ずその言葉には暗号が隠されている。現在のメールにだって、MIMEも一種の暗号だし、PGPっていうメール暗号化ツールもある。クレジットカードなど、金銭取引のあるサイトでは、SSLとかで必ず通信情報の暗号化がなされている。
 さて、ではこの暗号、絶対破られないものはあるのか?

 暗号には、色々なパターンがある。確実に。このパターンさえ判ってしまえば、必ず解読できる。その暗号化・復号ルーチンが、如何にややこしい数学理論に基づいていても、である。でなければ復号できない、ただの壊れたファイルになってしまう。それでは意味がない。Jpeg画像じゃないんだから。
 で、多分ブラウザのアップデートをした人は、多少気づいていると思う。アップデート項目の中に、「暗号強度を56bitから128bitに強化」というのがあるはず。IE5からのバージョンアップにはそれがある(ちなみに会社ではIE使いである)。
 これがつまり、暗号の破られにくさである。理論上では、PGPの1028Bitの暗号一つ解読するのに、スパコンを10台使って何百年とかかかるオーダーらしい(アメリカでは犯罪抑制のためにも、暗号ソフトの輸出を規制している)。そんな暇あったら、直接送った奴か送り先んとこねじこんで、力ずくで吐かせた方が数万倍手っ取り早い(^ ^)。
 この例をみて判るように、暗号強度とは「破られるまでにどれだけ時間がかかるか」である。決して「破られない暗号」ではない。例えば、破られるまでに一週間かかる暗号があったとしよう。しかし、その情報の重要性は三日で切れる。例えば何か企業間の重要な契約事項の承認などは、契約されてしまえばそこで終わりになる。情報の鮮度を維持できる間だけ、暗号は破られなければいいわけだ。
 そういう理論に基づいて、暗号は使われる。雑談に近いメールにこんな強度の高度な暗号を使っても仕方ない。それこそ、その程度ならシーザー法でも十分だ。
 であるから、うちごときエロ同人屋が使うレベルでは、そこまでの強度は要求しない。要は「そこまでして見たい」のなら挑戦してみてよって話。そんなん大したもんじゃないんだけどね。パスワードだって、特定の場所で公開するだけで、誰にも教えないわけではない。
 ただ、通常の暗号と違うのは、HTML(JavaScript)で出来るレベルだから、そんなにややこしくて時間のかかる方法はダメってこと。ま、「ハッカーな人たちには解読なんぞ朝飯前」ぐらいの、対一般人暗号である。つーか、そんな本格的な暗号ルーチン作れたら、こんなことやってないで商用ソフト作るよ(苦笑)。
 ま、まだ構想中なもんで、実際にモノが出来るかどうかは定かではない。←ウソツキになる可能性も多々あります。
 もし自分でやれなかったら、誰かアイディア渡すから、作ってくんねーかな。←すでに他力本願かよ。

・10/15
 気づけば、ここが開設されてもうすぐ2年。早い。
 同人クリエイターとなって2年半も過ぎた。……そんなに経ってない気がするな。もっと長いことやってるような気がしてならない。そりゃまあ、一般時代が長かったせいだろうが。それ含めたら10年以上。年が知れるのでもう言わない(笑)。
 それでレヴォ落ちてたら世話ないのよ〜(泣)。その前日、10/27が丁度サイト開設2周年なのに。まあ何か用意できるのかっつーたら、ねえ(苦笑)。

 とにもかくにも、私の活動は様々な人々に支えられている。同人仲間であったり、手にとってくれた方々がいてくれるからこそ、やってこられたのである。
 そういった方々に、こんな場ではあるが、感謝の意を表する。
 これからもまだ、この活動は続けていこうと思っている。正直、時間的に非常に苦しい面もあるが、これをやらなくなったら実用的な趣味が一つ減ることにもなり、もったいないことおびただしい。
 実のところ、もし今の仕事がなくなったら、プ(エ)ロマンガ家としてやっていくことも視野に入れなくてはならない。そのためにも、今のうちにプロとして通用するクオリティ、それだけの腕を手に入れたい、と思っている。
 今の仕事(プログラマ)は、思うに私の性格上、もっとも向いていない仕事なのではないかと昔から思っている。私は昔から数学というやつが苦手で、キッチリこうなればこう、という固定された結果しか出ない理論のみの、感覚的なバッファを持たない分野というのは嫌いだった。その方が楽だという人間も世の中には多数いるようだが、そういう中で生まれた理論は結局、たった一つの結果しか生まれない。
 その「たった一つの結果しか生まれない」というところが、私の嫌いなところである。人間の生き方を考えるに、結果が一つということはあり得ない。ミクロな素粒子以下の世界ですら、その存在は確率論でしか語ることは出来ないという。そんな物質から世界は構成されている。
 そんな物質の集合体である人間が、なぜたった一つの結果を論理的に追い求めつづけなければならないのか?
 人間は努力次第でどうにでもなる。しかし、長く生きていくうちに、その選択肢は徐々に狭まっていく。自由に生きていくのには、今の世の中は何かと、特に経済的拘束が大きすぎる。「金がないから奪えばいい」という具合にはいかない。
 そんな先が狭まった中でも、私は幸運にも、趣味を自分の中で最もプロに近いところまで持っていっていけてる。もちろん、このままでプロとして通用するわけではない。全くムリではない、というだけで、玉石混交とはいえ、プロとしてやっていくにはやはり相応の実力が要求される。それどころか、この世界は実力のみが有効な、プロの世界の中ではかなり公平な世界である。
 それだけに、そこへどれだけの時間を注ぎ込むかが問題になるのだが……生きていかねばならないのが、その一番大きな妨げになっている。この大いなる矛盾を解決するには、宝くじで億の金でも手に入れないことには解決しない。日本の平均的サラリーマンが、定年までに稼ぎうる金額が、バブル期で2億、現在で1.5億程度といわれる。であるから、宝くじ(ジャンボ)の1等が一発当れば、それを資金に株や投資などで上手く運用していけば、一生十分安定して暮らしていける。
 ……まあ、ここでそんな当ってもいないくじの皮算用をしても仕方ない。それに私は、株や投資には全く興味がない。そんなややこしいものに投資する気はまったくなく、死ぬまでに使い切るつもりでそれだけの金が欲しい、と思っているだけである。もちろん遺産として億の金を残す気もない。
 とにかく、現代は金で自由と時間を買うことが出来る。だが、その金がない場合にはどうするか。
 自由と時間を金に替えるしかないのである。それが働くということ、金を儲けるということである。
 たまたま私は、この趣味が「金になるかもしれない」方向へいっていたからこんなことをしているが、だからといって今のところ、儲けにはなっていない(苦笑)。
 ま、趣味だからいいんだけどね。
 もしもプロとしてやっていくことができるようであれば、私は迷わずプログラマという仕事は捨てようと思っている。  確かに、プログラミングは今でも、そしてこれからも稼ぐことの出来る技術の一つである。しかし、稼げるということと、やって面白いということは別物である。特にIT産業は技術革新が著しい。ハードのそれは2年一昔といわれるほどなのだが、対してソフトは、十年で一昔になる。開発言語に至っては、30年前のものが今でも使われている。そんな世界でも、生きぬいていくには、たゆまぬ努力が要求される。それはどんな仕事でもそうであろうが。
 しかし、自分に合った仕事ならともかく、私は過去にも一度、プログラマというやつを挫折している。というか、ゲーム業界にいた時代、企画志望にも関わらず、人員不足ということで、たまたま理系で適性がそこそこある、というだけでプログラマにされてしまったのである。
 望んでなったものではないにせよ、そこそこ技術を身につけてしまったことが、却って足枷になってしまったように思えて仕方がない。何しろ、自分の一番不得意な分野が一番稼ぎになるのだ。
 ……今にして思えば、高校時代、進路を決めるあの一言がいけなかったのだと思い起こしている。「英語はキライ」……この一言で、その場の勢いで言った一言で、私は理系へと進んだ。数学が英語の数倍ダメだというのは、理系に進んでから解った事だ。
 あのとき文系に進んでいたら、今ごろは多分プロのマンガ家になっていたか、もしくは既に同人作家歴十年以上といった古参同人マンガ家になっていたかもしれない。
 ただし、そのときは未だにパソコンも触れず、デジコミなぞ夢のまた夢、という古い時代のマンガ描きで、キーボードアレルギーに苦しむ、リストラ目前のサラリーマンであったかもしれない。
 そう考えると、今のこの状態も良し悪しなんだろうか、と思えなくもない。

 どちらにせよ、今の技術と知識を保持したまま十年前に戻るわけにはいかないのだから、今この手で出来ることをやっていくしかないのである。
 たとえそれが、好きで進んできた道ではなくても。

 どんな形でも、楽しむことができることがあるってことが、楽しいってことなんだろうね。

・10/29
 さてさて、10/27をもって、本サイトは開設二周年を迎えた。活動開始からは約2年半である。
 2年半という時間、非常に長い時間である。しかし、つい先月、最初のイベントに出たような気もするのだ。
 なんだかんだでもう10作品以上出した。本もCGも出した。  しかし、あくまでうちは「オリジナル中心」であり、パロディ比率は低い。一発モノのアニパロがほとんどで、マンガで描こうとまではいかない。
 要は「萌え」が欠如しているのであろう。
 いや、考えようによっては「自分萌え」と言うのだろうか。
 別にイベント出陣前に「俺って最高だぜェ〜!」とか気合入れたりもしないし(^^)、「他人の作品なんぞ全くおもろないクズやぺっぺっぺ」とか思ってるわけでもない。でなきゃあパロやんないよ。
 つまり、他人の作品では「完全には満足できない」から、自分でそういうのを創りたくなるってことなのである。
 ある意味、パロディだって「俺だったらこうする」という思いの具現化であろうが、私はそこで「他人のキャラや設定じゃ最終的には満足いかん」ので、自分のキャラで自分の話で自分の設定で……とくれば、オリジナルになるしかないのである。
 しかし、自分がマンガの道に入ったのは、やはりパロディからである。当時の題材は、やはり一番キャッチィであった「うる星やつら」であった。ビデオがなかったので、カセットテープに音だけ録音して、イメージだけで画像再生を行ったものだ。
 しかし、キャラがまともに描けるようになったのは、やはり大学を出てから。大学時代は落書き以上に修練しなかったため、腕が鈍らないようにする以上ではなかった。その頃の作品ですら、今見ると恥ずかしい限りである。
 その当時では、もうパロディは描いていない。高校時代に投稿作品を描こうと思い立ち、それが切っ掛けとなってオリジナルを創る方面へと流れ始めたのだ。大学時代に死ぬほどやったRPGのシナリオ創りもまた、オリジナルへの傾倒に拍車をかけたように思える。
 そして今に至って、オリジナリティの重要性を再認識するに至る。
 目標としているプロになるには、オリジナリティがなくてはならない。しかし、その土台になるものは、基本的に「真似」である。プロのアドバイスでも、「上手いプロを真似て上手くなれ」というのは必ずある。パロディもその一手法である。
 が、そればかりやっていても、オリジナリティは発揮できないし、プロになるにはそこから抜け出す必要もある。当然技術的向上も必要だ。
 別にパロディという行為がレベルの低い行為だ、と言うことではないし、そういうことを言う気もない。ただ、パロディには「鮮度」の問題が必ず付きまとう。その作品がなくなれば、パロディの生命線は先細りになる。まあ、誰かが続ける限りなくなりはしないが。
 ただ、私はパロディを追及する気にはなれない、それなら自分で全て創り上げた方が楽しい、と思っているだけである。プロを視野に入れている以上、必要なことでもある。
 単に主観の相違かもしれないけどね。


・11/8
 サイト開設二周年と相成った。
 玄関口もちょっとだけリニューアルした。でもあれ創るのって、なかなか面倒よ。
 そんなこんなで、前回の更新より、レヴォで配布した無料配布版CG集を、オンラインでも配布している。
 まあ、はっきり言って「オカズ」としては大した物ではない。人によっては大した物かもしれないが、私にとっては大したモノではない、というところだ。
 一応分量だけは、フロッピー一枚でCG10枚という、自分なりの基準はクリアしたつもりだ。塗りに関しても、マーカー風の塗りを試した。白の部分がやや面倒だが、時間的には普通に塗るのと大差ない。一日1〜2枚、原画込みで約二週間という短期決戦で仕上げた。

 最近、「闘う女(の子)」という素材に非常に傾注している。
 「グラップラー真牙」という作品も、その素材から生まれたものだ。
 あれ自体は、まだイントロダクションに過ぎない。次の二巻、そして三巻までがイントロでしかない。何しろ、タイトルとなっている主役が出るのが、三巻になってからなのだ。
 そんな話を仲間内ですると、「おーまーえーはーアーホーかー」とやられるのがオチなのだが、もっともっと広い大きいステージのワンエピソードに過ぎないのだから仕方がない。本来なら、小説でやるようなネタなのだ。

 私のサイトを覗く方々は、サイトのネタに合わせてロリ好きな傾向があろうかと思う。そういう方々には、最近の傾向は何事や、と思うかもしれないが、私の流れは、メカ設定バカ→マンガバカ→格闘バカ→RPGバカ→小説バカ→ロリをたくという道を辿っている。
 つまり、「ロリをたく」の一面は、つい近年形成されたものなのである。
 その意味から、現在の作品展開は、原点回帰なのである。「格闘バカ」に関しては、書くとテキストでフロッピーが3枚は埋まるので、ここでは書かないが。

 こんなことをのたまうと、「大河ドラマ」みたいな、話を広げるだけ広げて収拾がつかなくなる、半ばホラ話(笑)のような体たらくになってしまうのではないか、と思われるのだが、「グラップラー真牙」に関して言えば、現在の予定では全11巻、年2〜3冊ペースで、あと三〜四年で終わる予定である。ほらもうホラ話だ(苦笑)。鬼の大爆笑が聞こえるわ。
 つまり、ラストはもう決定していて、そこまでの経過が決まっていないだけなので、その途中がどうなるかまだ不明なだけである。だから、最短ではあと5冊あれば決着はつく。2年で終わらせることはできる。
 この2年とか3年とかいうのは、その間にCG集とか他の作品を年1・2回出して、という計算で、である。全てこれに賭ければ、年4冊出して最短1年ちょいで決着がつく。
 ただ、効果的なイベントがあるかどうかという点で、コミケ・レヴォ・コミティアぐらいは押さえたいのだが、どれもこれも抽選じゃんかよ。
 ゆえに、抽選漏れも考慮しての四年という期間設定である。
 この中には、様々な修行項目も組み込まれている。
 一番の課題は「背景」。そして話の創り方、レイアウティング、キャラの描きこみ、デジタル処理の手法確立等など、テクニカルな面が非常にある。
 一番の目的は「慣れ」で、分量を描けば確実に上がるスキルというのはある。それを鍛える意味からも、この長期計画は外せない。
 平行して、CGの鍛錬。色使いはセンスの問題として、デザインセンスはある程度慣れで何とかなるもんらしい。経験則である。  しかし、それを埋めるには、かつて写真屋を自在に使えるようになるまでに要したあの数ヶ月をまた、絵師で再現する必要がある。専業マンガ家ならともかく、今の私は兼業アマチュア作家でしかない。すくなくとも、会社に通勤するなんてことを辞めて、クリエイター一本で食うぐらいの立場でなければ、そうそう新技術の修行は手を出せない。よほど必要で、切羽詰れば別だが、少しは慣れた写真屋でもそこそこ出来てしまうから、余計にそこまでの必要性は感じないのだ。

 とにかく、自分が満足できるぐらいのスキルを手に入れて、初めて満足行く作品作りができるもんだと、私は考えている。それはもちろん誰でもそうであろうが、あたしゃ基本的にナマケモノですから(苦笑)、こんな長期計画でもないとやれないのよ。

 だからって、ロリ道捨てたわけじゃござんせんからね。もっとディープにこそなっても(笑)。

・11/19
 コミティアに初めて一人で出た。
 すでに何度か出てる奴の手伝いで行ったり、一般で行ったりしたことはあったが、自分がサークルとして参加するのは初めてである。
 まあ、雰囲気はわかっているだけに不安はない。ただ、コミティアは「創作オンリー」というスタンスだけに、上手い奴はとことん上手い。コミケを除けば、その他の中規模イベントでは最も画力レベルの高いイベントではなかろうか。そういう意味では、非常にコワいイベントである。

 最近、イベントに出て思うことは、やはり「アピール不足」が問題なのか、ということである。
 「見ていってください」と声をかけることではない。「一目見ればわかる」ようなアピールが足りない、ということである。
 例えば、CG集では、見本を用意していても、そこまで見るのは半数程度。実際は、ぱっと見のジャケットデザイン、そして裏のサンプルを見る。
 が、それ以前に、アピールするようなサンプルプリントを目立つように用意しておけば、もっと売れるのではないか、ということである。

 この「売れるようにするにはどうしたらいいか」という考え方は、商売として同人を考えるのと同時に、「読者にアピールするためにはどうしたらいいか」というマーケティングを考えることになる。
 どちらもアマチュアリズムには反する志向であるが、現代の同人をやっていく上では欠かすことの出来ない要素である。
 売る売らないを決めるのはあくまで本人だが、単に趣味でやっていくだけでは、マンガ同人はやっていけない。かつての文芸同人とは違うのだ。
 「相手の欲するところを読みとって対応すること」、すなわちそれこそが「愛」であるという考え方がある。その逆が闘争である。
 マーケティングが愛であるとは言わないが、「読者のため」、そういう考え方を持つことが同人世界で成功する秘訣なのだろうか。
 ま、成功するしないってのは、本来アマチュアリズムには必要ないことのはずなんだけどさ。「参加することに意義がある」わけで。

・12/9
 さてさて、今年も「コミックマーケット・冬の陣」が迫ってまいりました。
 今回、例年のごとく(苦笑)落選したが、近年は周囲に委託可能な仲間ができて、そこへ委託することが可能となったため、出られる確率は飛躍的に上昇している。その替わり、自分が当選すれば、落選した人の委託に、出来るだけ場所を提供する。相互依存関係が出来ているわけである。
 まあ、こういう共生関係を作り上げることもまた、同人活動の一環なのだ。

 ……などと考えて、自分自身、随分変わったもんだと思う。
 私自身は、自分自身で何かを先頭に立ってやる、というタイプでは決してない。会社でいうなら、社長より技術部長になりたい。リーダーより、信頼されるテクニカラー、スペシャリストでありたいと思っている。
 ではあるが、周囲に同好の士がいないことには、誰かに乗っかって活動というわけにはいかない。となれば、自然、自分一人でやらねばならないのである。
 私は、一人でやれることを好んでやる。逆に、誰かと協調してやることに関しては、趣味と重ならなければ熱心にはなれない。
 だが、この活動を始めるにあたり、全てを自分一人で解決しなければならなかった。イベントの手配、作品製作、頒布、そして傾向と対策……いざやる気になってから、慣れてからは早かった。もう3年になろうとしている。
 その間に、色々関係が広がった。技術的にも向上した。レベルはまだまだだが、一応それなりには満足いけるものも作れるようになった。
 作品作りには、他人の手は要らない。マンガの「作業」の部分においては他人の助けは欲しいと思ったことはあるが、デジコミ作業となってからは、作業マシンを用意するなどしなければならないことが多くなり、紙メディアの場合とはまた条件も違うので、簡単に他人に頼むことが出来なくなった。まあそれはそれでいい。元々一人でやるべき感覚的領域は、他人に頼むこともできるものではない。
 が、実際、イベントでは他人と接する機会は自動的に多くなるし、暗黙の了解とはいえ協調が必要とされる。特定の個対個という関係は少ないが、「個対不特定の個」という短時間の関係もある以上、全くの受身でいることは出来ない。
 それに、これだけ同好の士が集まって、一人で行って一人で帰る……というのも寂しい限りだし(苦笑)。
 今のところ、私の周囲に、活動が完全に重なる人物は、残念ながらいない。部分的に重なる人はいるが、「ろ」「CG」「本」「オリジナル中心」……とここまで全て重なる人はなかなかいない。ここに「格闘」まで加えたら、もっと重複率は低下する。
 であっても、「ろ」+「CG」とか「ろ」だけでも重なれば、結構共通項は見出せる。
 実際、それで十分である。人の好みなど、全て共通するわけはない。逆に全て共通してたりすると、自分を見ているみたいで(笑)イヤかもしれない。
 だんだん言っていることが違う方へ向いているので軌道修正しよう。
 とにかく、何か新しいことを始めるにあたっては、自発的に動くことを強要される。同人を始めるにしても、新しい人間関係を作るにしても、今の仕事を辞めて新しい仕事に就きたいと思った場合でも、英会話を始めるでも、パソコンを習うでも、日常何かを買おうとしているだけでも、である。
 そして、その自発的な意志が大きければ大きいほど、自分にも大きな何かをもたらしてくれる、と思っている。
 事実、この活動は、大きなものをもたらしてくれたと感じる。一人で淡々と続けていたなら、ありえないものだ。

 私は、決して自発的に何かをするのは得意ではない。
 しかし、何かを始めることで、得られるものは確実にある。
 それが時間がかかり、手間がかかることであり、苦痛をも伴い、多くの人と関わることであればあるほど、得られるものも大きい。
 その「面倒」に耐えられた者にだけ、「それ」は与えられるのだ。

 「がんばった人にはご褒美があるよ」ということだね。

まだまだ続くよ。


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