宇王伝
序
1
2
3
4 5 結
2. 淫獣の山
山間の道、強い日差しの下を、日除けのフードとマントを羽織った明日香が行く。
覇王都市を出て二週間。明日香は、自分の身体に残った、呪いのような欲望を忘れるために、ひたすら歩き続けた。疲労困憊してしまえば、それを思い出すことはなくなるだろうと思ったからである。
しかし、それは甘い考えであったようだった。
川で水浴びをすると、ペルフェウスに与えられた快楽が自然と身体に思い起される。眠れば、夢の中でペルフェウスが自分を快楽で苛む。自分の指だけではその快感を再現できるはずもなく、満たされない欲望だけが、日々強くなっていくだけであった。
やがて、山間の小さな村に、明日香は辿り着く。
開拓民の村らしいが、どうやら開拓はこの山を避けるように左右に展開してしまったらしく、ここには十八世帯九十人余りが住んで、農業を営んでいるいるだけであった。それも大半が男で、女は子供か母親か年寄だけで、妙齢の女性がこのような場所に来ること、それ以前に人が通り掛かることすら珍しいため、明日香は非常に歓迎された。
「まあまあ、呑みんしゃい呑みんしゃい」
歓迎の宴会で、村での唯一の楽しみである地酒を勧められ、明日香もペルフェウスの影を忘れるため、ついつい注がれるがままに杯を空けていく。
「それにしても、こんな山奥に、あんたみたいなめんこい女子が一人で、どうしたんかいね?」
村長に問われて、明日香は武術修業のため、と答えた。
「武術の先生かね?」
「ほれじゃあ、ちいっとお願いがあるだどもよ、聞いてもらえんもんだかな」
「私に出来ることなら、お力にはなれると思いますが」
村長が話すには
この山、「神降る山」ゴッドフォーリン山脈の最北端・エンヴァス山は、この一帯で開拓の最も遅れた山であった。ここより南西に向かう峠道が一つあるのだが、そこに得体の知れない怪物が巣食っており、通りがかる旅人を襲うという。
「そんで、道が通れんで、村も寂れる一方でなあ。その怪物を退治できんもんかと思うんじゃけんど、どないなもんかのう?」
明日香を見つめる村人たちの視線を受けて、明日香は満面の笑顔で、
「なーに、怪物の一匹や二匹、この私にどーんとお任せぇってなもんで」
と大見得を切って、大笑いしながら答えた。
それを見て、二十八人の居合わせた男たちは、一様に安堵と期待を込めた視線を投げ返した。
一方、裏方で手伝っていた九人の女たちは、これまた一様に頭を振って呆れていた。
「ありゃ酔っ払いの戯言だよ」
ダメで元々、退治できれば万万歳、どうせ村には被害はないのだから、やらせるだけやらせよう、と女たちは忠告などせず、黙って成り行きを見守ることにした。
翌日、明日香は峠を現場に向かって歩いていた。酔ってはいたが、安請け合いしたのも合わせて、話は覚えていたのだ。
怪物、と言われていたが、それがどんな怪物であるかは、誰も知らない。
ただ、襲われて逃げ延びた旅人が、得体の知れない影に襲われ、荷物を置いて逃げて来たという事件が、かなりの数起きていた。中には行方不明となった者もいるが、その場で殺されたということはなかった。行方不明になった者は怪物に食われたのだろう、と村人は言っていた。
しかし、それらの情報を総合すると、「怪物は出たが、人が直接襲撃されたり、その正確な姿を見た者は誰一人としていない」「怪物は旅人より荷物を狙っている」「行方不明者の大半は女である」「怪物の出没する時刻は、夕刻から夜にかけて」という事実があった。
「魔導士を含めた盗賊」という犯人像が、明日香の頭の中には浮かんできていた。
視界の利かない森で、視界が利かなくなる時間に幻覚系の魔法を使って旅人を幻惑し、その隙に荷物を頂き、ついでに女をかっさらう。やり口は、地方でよく聞かれる盗賊と同じである。魔法にさえ気をつけていれば、明日香一人で十分対応は出来た。
登りの峠道は、そろそろ問題の峠の頂上に差しかかる。この向こう側、西側でしか怪物は出ないという。
峠から見下ろすと、かなり遠くに麓を通る街道が見えて、そこまで少し曲がりながら、ここからの道が、森の中を見え隠れしながら通っている。峠付近は草木も疎らな岩場であるが、少し下りた辺りから森に入っている。ということは、峠の斜面で森に入ったあたりに、盗賊のアジトがあると見て正解だろう。
そこで明日香は、わざと彼らに捕まって、それから盗賊を一網打尽にすることにした。現場に出てくる数人を退治したところで、事件がなくなるわけではないのだから。
夕暮を待って、明日香は旅人を装って峠道を下り始めた。村の男たちが協力を申し出たが、彼らがいてはむしろ人質にされた場合に邪魔になる可能性があるので、偵察という理由でそれは断った。
森が近付いて来ると、徐々に影が多くなり、視界が悪くなっていく。
しかし、明日香には〈宇〉による気配感知ができる。誰かが、もしくは「何か」が近付いてきても、すぐに反応できる。
やがて、明日香は周囲を取り囲む「数人の人間の気配」を感じる。明日香の予想通り、魔導士を含めた盗賊らしい。背後の一人が、妙に〈気〉を高めている。
魔導士らしい気配以外の四つが、明日香に近付いてくる。その四つに向けて、魔導士らしき気配から何かが投射される。
「なるほど……幻覚で包まれた盗賊ってことか」
明日香は眼を閉じて、迫る気配だけを感じとる。草を掻き分けてくる音は、盗賊とわかっていなければ、次にはいきなり幻覚を見せられ、怪物だと思い込んでしまうだろう。
しかし、明日香にはそれは通用しない。おそらく幻覚で覆われているのだろうが、迫ってくる盗賊自体の気配の強さが変わっているわけではない。
四つの気配が明日香の前後に二つずつ現われた瞬間、明日香は立ち止まり、眼を開けて相手を観察する。
彼らを覆っていた幻覚は、おそらくキマイラの一種であろう。狼、獅子、山羊の三つの頭に蛇の尾、背中に生えた大きな翼。背後の二人のそれはまた別で、蛇に手足が生えたような怪物で、いわば蛇人間であった。
しかし、そのどれもが、本体は明らかに人間であった。それらの幻覚の中には、人間の気配が見えるのだ。
さて、どうしたものか ここで少しは驚いたように見せた方がいいのか。それとも、魔導士が出てくるまで待った方がやりやすいかもしれない。とにかく、わざと捕まらなければならないのだから。
「 旅人を襲う怪物って、あんたたちね」
明日香は、幻覚とは知らないような口振りで対する。
「ちょうどいいわ 私が片付けてあげる」
明日香の言葉に、四人は明らかに動揺した。まさか、この姿で気圧されない人間がいるとは思っていなかったからである。
明日香が、前の二人に走る。
キマイラの二人は、襲ってくるでなし、かといって逃げることも躊躇われたようで、反応が遅れた。
右の男へ、明日香の蹴りが入った。
蹴られた瞬間、幻覚が消失し、男だけが宙を舞う。
「はん、やっぱりね」
すぐ左の幻覚へ、明日香は突っ込んでいく。幻覚を無視して、中の盗賊の顔へ、平手打ちのように掌打を叩きこむ。幻覚は一瞬遅れて消え、首を大きく捻った男が、よろめくように一回転して倒れる。
「こ、こいつ !」
背後の二人が剣を抜いた。
離れていた魔導士が、気の集中を始めている。
早く来い 魔導士が魔法を完成させるまで、明日香は相手の出方を窺うように待つ。
そして、魔導士が魔法を完成させた 明日香の周囲に、霧がかかる。同時に、耐えられないほどではないが、身体の力が抜けていく。〈麻酔雲〉だ、と明日香は悟り、同時に抵抗を止めて、意識が霞むがままに任せた。
さて、後は運んでくれるのを待つだけ 明日香は地面に伏して、最後に考えた。
「冷汗かかせやがって……ふうん、結構いい女じゃん」
残った二人が、動かなくなった明日香に、ゆっくり近付いてきて、顔を覗き込みながら言った。
「金は持ってそうにないが、しばらく暇潰しにゃなる。連れていくぞ。アルザス」
一人が明日香を抱え上げ、もう一人は倒された二人を何とか起こして、出てきた魔導士アルザスと共に、再び森の中へと消えていった。
明日香が気付いたのは、身体を這い回る、気持ちの悪い感触のためであった。
眼の焦点が合ったとき、そこには数人の男たちが、裸で明日香を取り囲んでいた。
「な、なによあんたたち」
明日香は、自分の置かれた状況をざっと観察する。
ここはおそらく、盗賊のアジトの一室。洞窟を改造したものだろう、木材で補強してはあるが、あちこちに岩肌が露出している。
自分は、ベッドの上。手足は鉄枷で固定されていが、これはいつでも外せる。
周りには、男が七人。いずれ劣らぬワルそうな人相、そして好色な目つき。そのうちの一人は、明日香を狙った魔導士のアルザスである。
「この状況でナニもないもんだ」
「そうそう。おとなしく姦られてりゃいいんだよ」
と、のしかかってくる男。その汗とフェロモンの入り混じった臭いに、さすがに明日香は生理的嫌悪感が先に立ち、抵抗を始める。
が、男たちはさらに四人で明日香の手足を一人ずつ押さえて、のしかかっていた一人目が、臭い息を吐きかけながら囁く。
「逆らうと、痛い目みるぜ」
「おとなしく言うこと聞いてりゃーよ、飽きたら帰してやらあ」
男たちの指が、明日香の胸を、脚を、秘部を触りまくる。半ば無理遣りな、愛撫とは到底言えない刺激にも、身体は徐々に反応し始める。
さすがにそろそろまずいと思い、明日香は本格的に脱出を試みる。
しかし、男の力は、予想以上に強力に明日香の四肢を拘束していた。
「や、だ、バカ、離せぇ 」
その時、明日香は微かな芳香と同時に、目眩を感じた。
「大丈夫大丈夫、ちゃんと準備はしてやるからよ」
男の指が、茂みの上から、ぬめり始めた亀裂を乱暴にまさぐる。
「そうそう、最初に好き勝手やると、すぐに壊れて使いものにならなくなっちまうからなあ。新しいオモチャは大切にしないとよ」
しゃべる男たちの声が、次第にうねるように大きく小さく谺していく。
この香か 気付いたときには、明日香の身体は、すでに抵抗力を削がれつつあった。
身体が熱い。それに、力が入らない 集中しようにも、思考力も低下している。
「さぁて、そぉろそろいぃかぁな」
「おぉう、そぉれえじゃぁまずぅ、じゅぅんばぁんきぃめよぉぅぜぇ」
男たちの言葉も、聞き取りにくくなってきた。まず、枷をなんとかしなくては
その時、アルザスが、明日香の腹に手を当てる。
そして、そこへ何かの「魔法」を投射した。
明日香の腹に熱球が生じ、それが弾けた瞬間、「それ」は蘇った。
「〜〜〜〜〜〜〜ッッ!」
爆発的に全身に広がる、純粋な快楽の波紋。
それは、ペルフェウスが使った〈宇解〉と同じものであった。
いや、ペルフェウスは魔導士ではない。純粋な〈宇〉によるものではなく、それは魔法であった。
明日香の身体が突き上げられるように痙攣した。
一瞬にして、絶頂が胎内で爆発する。「快楽」の波紋が血液を、身体の水分を伝わり、全ての爪先、髪の毛先にまで行き渡った。
明日香の身体が、跳ね上がるように反り返る。絶叫を越えて叫ぼうとした咽喉は、声を出すことも出来ない。
跳ねた勢いは、男たちの手による枷も弾き飛ばさんとするほどであった。
「おいおいっ、効き過ぎなんじゃ、ねえのか」
一人が、痙攣の収まった明日香を押さえ直して、アルザスに問う。
「いや、そんなはずは……大体この魔法、そんなに強烈じゃないぞ」
アルザスは少し考えて、
「この女、魔法アレルギーなのか、もしくは」
指で、明日香の乳首を軽く摘む。
「ひゃうっ!」
再び、明日香の身体が跳ねる。それだけで、明日香は再び達してしまう。
「過去に、この魔法で調教された経験があるか、だな」
アルザスはこの魔法を習得してから、その効果について様々な研究を行なってきたが、このような反応は初めて見る。今まで捕らえた女も、ここまで急激かつ大きな効果はなかったのだ。
「ほお、じゃあこのお姉ちゃん、調教済みってことかい?」
「かもしれん。どちらにしろ」
アルザスが、明日香の陰裂に無造作に指を差し込む。
同時に明日香の身体が、三度目の絶頂に跳ねる。
「もう準備万端ってことは確かだ」
抜かれた指は、すぐに雫が滴るほどに濡れている。
「おぅし、まずいくぜ」
先の順番決めで一番になった髭面の男が、明日香の足枷を一つ外し、持ち上げて肩に乗せる。たぎる一物を、焦りながら明日香の膣内へ埋めようとする。
さほど大きくはないが、男のモノが侵入してくると、明日香は嬌声を上げて、入ってきた肉竿を強烈に締め付けた。
「お、お、お、うぉ」
髭面の男は、一気に奥まで突き上げた瞬間、その強烈な締め付けと絶妙な蠢きに、一瞬で達してしまった。
それを見ていた男たち、一瞬間を置いて笑いだす。
「……おいおい、三こすり半どころか、一こすりでおしまいか?」
「ぎゃはははは、早すぎるぞおめえ!」
「そんなんじゃ、世の中の女、誰も相手にしてくれねえぞ」
「う、うるせえバカ野郎!」br
一回交替というのが決まりなので、男は仕方なく脇へ退く。
「あーあ、早速孕んじまうなあこりゃ」
小さな泡音と共に、明日香の陰裂から白い粘液が流れ出る。
「知らねーよ。早くしろよ」
「せめて三回ぐらいは突きたいよなあ。一回じゃ虚し過ぎるもんな」
「やかましい。てめえらも犯ってみりゃわからあ」
「そんじゃ、犯らせてもらうかねっと」
全身を上気させ、明日香はすでに理性を失っていた。媚肉を指で広げて、さらにこぼれ出る白い粘液に苦笑しながらも、二人目が肉棒の先へ潤滑液を擦り付ける。
「……て……」
「ん?」
二人目が、明日香が何かを呟いているのを聞きつける。
「何だ?」
「……やく、してぇ……」
明日香の紅潮した頬、潤んだ瞳は、男を誘惑するには十分すぎる「魅惑」を放っているように、彼らには感じられた。
「言われるまでもねえ」
二人目が、もどかしげに明日香の膣へと侵入していく。
同時に、その表情に「恍惚」が上塗りされていく。
「おうっ……こい、つぁ 」
うねる肉壁が、男を頂点へと押し上げていく。腰の中央に何かが集まってくるような快感に、二人目の男は、見ている周りの連中が失笑するほどのだらしない笑みで、それを貪っていた。
が、彼も二桁を突くことも出来ずに、明日香の胎内へと放ってしまう。
「なにやってんだ。どけどけ、俺のグレートソードはてめえらのダガーとは違うぜ」
三人目は、身体は小さいが、「グレートソード」と言うだけあって、立ち上がったペニスが臍の上まで届いている。その太さも並みではなく、前の二人の一・五倍はあろう。
「お前がやると、緩くなっちまうからなあ」
「そりゃーおめえのが小せえんだよ」
「グレートソード」が明日香の淫門をこすり、潤滑油を纏う。
明日香はもはや悶え、嬌声を上げるだけで、抗う素振りすら見せない。
「うりゃ!」
一気に突き上げた三人目は、自分の「剣」が、すんなりと一気に奥まで吸い込まれていくのに絶句し、同時に、今まで感じたことのない、「快楽の逆流」とでも言うべき、激流のような絶頂への押上げを食らっていた。
「く、くそ、この女、メチャクチャすげえ……!」
だろうよ、と先に終わった二人が苦笑する。
三人目の男は、先の二人よりは長く持たせようと、自慢の巨砲をゆっくり抜き差しし始めた。しかし、少しでも気を抜けば、一瞬で限界を突破しそうになる。
「く、この、この、どうだっ」
「……は、あは いいっ……すごっいっ 」
明日香の手が、何かを欲しがるように、鎖を鳴らして虚空を掴む。
「ほれ、こいつでも掴んでな」
順番を待っている四人目が、明日香の指先に自分の硬くなった男の武器を持たせる。
明日香の指が、武器を研き始める。つたない、そして手枷のため、ぎこちない動きしか出来ないが、四人目はそれで、急激に腰の辺りから持ち上がってくる高まりを覚える。
五人目が、自分のモノを持たせながら、手枷を外す。
「おい、そりゃあマズくねえか」
「構うこたねえ。一回に一人しか相手出来ねえよりはいいだろうが」
すると、待っていた六番目の男が、枷を外して、明日香の上に跨がる。
そして、自分で明日香の胸に凶棒を挟み込み、擦り上げ始める。
その先を、明日香の舌が待ち構えていたように舐める。
「うお、いいぜこりゃあ……!」
明日香の両手が、掴まされた肉棒を擦り続ける。
「お、な、なんかすげぇ、こいつ 」
三番の男が、一気に動きを早める。
四番五番の男が、出そうな「せり上がり」を察知する。
六番の男が、明日香の胸を潰しそうな勢いで擦りつける。
四人の動きが、一斉に止まる。
明日香の胎内に、大量の白濁液が流し込まれた。
両手から、顔に向けて二人の粘液が浴びせかけられる。
胸の上から、顔に、口に注がれる粘液。
その勢いと量は、盗賊たちも経験したことのないほどのものであった。このまま、全身の精を一気に放ってしまうのではないかと思われるほどの強烈な発射感覚と、それと引き替えにもたらされる、かつて体験した事のない、極度の陶酔。彼らの理性は、粘液に溶け込んで出ていってしまったかのようであった。
茫然とした表情で、四人は強烈な快楽に酔い痴れる。数秒で終わるはずの絶頂感は、女のそれのように、ゆっくりと収まっていく。
「……っん……」
顔を汚し、頬を流れていく粘液を、明日香は指で拭い、自ら舌で味わう。
「……まだ、終わりじゃないんでしょ?」
胸の上に跨がっている男に、明日香は妖艶に微笑みかける。
「たりめーだ。これからが本番だ」
三番の男を押し退け、六番の男は、こぼれ出る精液を塞き止めるように、自分の栓棒をもどかしげに押し込む。
「おうッ、たまんねぇ……」
「おい、後ろ使わせろよ」
最後まで待たされていたアルザスが、六番の男を明日香と体を入れ替えさせる。栓棒から漏れた粘液を、明日香の後門になすりつけ、指を差し込む。
「あンっ、そっちはぁ 」
「こっちは? 何だよ」
無理遣り捻じ込んだはずの二本の指は、潤滑液を纏っているとはいえ、いとも簡単に飲み込まれていく。
「十分仕込まれてンじゃねえか、こっちも」
二本を三本に増やしても、明日香は苦痛を表すどころか、むしろ歓喜すら覚えていた。
「うおッ、出るッ」
六番の男は、肛門を責めたことで反応した明日香の締め付けに耐え切れず、子宮内に精液のストックを増やして果てる。
「くそてめえ、先やりやがって」
四番の男が、浸っていた余韻から解放されて、六番の男を押し退けて、もどかしげに挿入る。
「こんだけ出来りゃ十分だな……せっと」
アルザスが、二本目を明日香の後ろへ押し入れる。
「あ、あああぁぁぁ 」
明日香が、身体を突き抜けていく鋭い快楽の針に痙攣しながら叫んだ瞬間、五番の男がその口へ、肉の栓をねじ込む。
「しっかりしゃぶれよ、おら」
ペルフェウスに仕込まれた舌技が、自然と男の快楽を引き出していく。舌が竿に絡み付くと、咽喉の奥にまで引きずり込まれていく。そのまま身体ごと吸い込まれていくかのように、男は感じた。が、肉体はそれとは逆に、そこから波紋のように陶酔感が広がっていくのを感じていた。
「こいつ、すげえ仕込まれてるぞ……!」
アルザスが、脳髄を灼くような絶頂に耐えかねて、直腸に精を放出して呻く。搾り取られていくようでありながら、それでいて無限に精力が湧きだしてくるような、そんな感覚は、彼に限らず、全員に共通していたものであった。
前と後ろと口の三穴で同時に出来るようになると、七人は入れ替り立ち替り、明日香に精を流し込み続けた。
それから、約半日が経過する。
全員で何回出したのか、数えきれないほどに犯され、明日香は粘液の床に倒れていた。彼女自身も、全身白濁液に塗れて、ひくひくと微かに痙攣しているだけであった。
その周囲には、同じく精根尽き果てて、中には竿の先から赤い粘液を流して倒れている男達がいた。
「こ、こいつ……淫魔じゃねえのか……?」
アルザスは、何とか残った意志力を振り絞って、外の水場へとやってくる。
「どうした、その格好」
そこでは、頭目のクレインが顔を洗っていた。
アルザスは目の下に隈をつくり、とりあえず引っ掛けてきたシャツだけで、下半身も裸のままであった。
「あの女か? てめえら夜通し犯ってたな。どうだ? 具合は」
「……とんでもねえ女だよ、ありゃあ」
小川で顔を洗い、ついでに一物を洗って、アルザスは答える。
「一度犯ったら最後、こっちが足腰立たなくなるまでヌかれちまう。あいつぁきっと、淫魔かなんかに違いねえ」
「淫魔ぁ?」
クレインは思わず噴き出す。
「何だおい、七人がかりで、一人にいいようにされたってか?」
「あんたも姦りゃあわかる」
アルザスは、意味ありげな笑みを浮かべる。
「おう、結構いい女だったからな。後で参加するとするか」
「……知らねえよ」
「女一人にビビリ入れてんなよ。腰が抜けるまでやったろうじゃねえか」
クレインは笑いながら、アジトに戻っていく。
「……しかし、妙な女だな……」
アルザスは、明日香を犯している最中に感じた、妙な感覚を、今になって不思議に感じていた。魔導士であるからこそ、それを不思議に感じたのであるが、それがなぜであるかは、まだわからなかった。
「……まあいい。健康のため、犯り過ぎに注意せにゃな」
アルザスは呟いて、冷たい水で身体をさっと洗う。
しかし、それはクレインに言っておくべきであった。
三日後。
クレインどころか、盗賊十八人全員が、疲労でへたばっていた。
アルザスが連れてきた女を味見しようと、残りも入れ替わりで明日香を犯したのはいいが、その誰もが干涸びそうになるまで出しまくって、やっとやめることが出来たという体たらく。
一度犯れば、一週間は女を抱きたくなくなるぐらいだが、今度は明日香が男を求めてくる。
「ねー、もっとしようよぉ……」
虚ろな目で男のペニスを漁る明日香に捕まったが最後、少なくとも三回はヌかれ、極楽から地獄へ落とされる。されている最中には、盗賊たちも陶酔の沼で溺れているようなものであったが、終わった時には、全身の脱力感と、痛みすら感じる性器が使用不能になって残されるだけであった。
「いい加減にせんか、このド淫乱が」
初日で懲りたアルザスが、逃げそこねた盗賊の上にのしかかって、ペニスを立たせようとしゃぶっている明日香を無理遣り水場へ引っ張っていって、水の中へ放りこむ。
「きゃん!」
水の冷たさに、明日香は三日ぶりに我に返る。
「 な、何すんのよ!」
「そりゃあこっちのセリフだ」
アルザスは眉を顰めたまま、川の中の明日香に問う。
「お前、一体何者だ」
「何者って……自分で捕まえておいて、その言い草はないでしょ」
明日香は、水の冷たさを我慢して、全身から漂う異臭に気付き、その源を洗い始める。
「あんたたちこそ何者よ」
「盗賊だ。お前は何だ?」
これ以上ないぐらい簡潔に答えて、アルザスは質問を繰り返す。
「盗賊狩り」
明日香は、しれっとして答える。
アルザスの口の端が、ひくっと引きつる。
「……もう一遍言ってみろ」
「あんたたちを捕まえにきたの。あんたたちがここに巣食ってるんで、この先の近道が利用できなくて困ってるのよね。だから退治しに」
「ふざけんな」
アルザスは怒るより呆れた。たった一人の女を討伐に送り込んで来る方も来る方だが、ほいほい一人で来る奴も来る奴だ。
「お前、いいように利用されてるとは思わんのか?」
「別に。私は一人でも十分だと思ったから、一人で来たのよ」
明日香は、疲れを感じてはいるが、十分動けることを確認し、身体を洗い清めていく。
アルザスは「コケにされている」と怒る以前に呆れ果てて、一応訊ねてみる。
「お前一人で何が出来る? 大体お前、何が出来るんだ?」
「武術」
「武術ぅ?」
「そ。例えばこういう事とかね」
明日香が立ち上がってみせると、アルザスは「それがどうした」という表情を作る。
「足元」
言われて、アルザスは明日香の足元を見る。
そして、初めて目を見開く。

明日香の脚先が、水面に浮かんでいるのだ。そこから不自然な波紋が発生している。
「だ、だから何だと言うんだ」
水に浮かぶぐらい、俺にも出来る、とアルザスは反論する。
「じゃ、こういうのは?」
アルザスへ、明日香が手を差し伸べる。
訝しむアルザスは、その手から「異様なオーラ」が広がっていくのが見えた。
「!」
アルザスは、咄嗟に一歩下がり、〈シールド〉を創ろうと集中に入る。
「遅いわね」
明日香が笑う。
その意味を、アルザスは瞬時に悟った。
明日香の手から放たれた〈宇〉は、すでにアルザスを覆っていたのだ。
アルザスの身体から、自由が奪われる。膝に力が入らず、その場に膝を落とす。
身体を起こそうと抗った末、アルザスは地面に転がる。
「しばらくそこで休んでいて。後でまとめて連れていくから」
明日香はそう言うと、身体にもう一度水を浴びて、アジトへと戻っていく。
「く、そう……! やっぱり、とんでもねえ女だ……!」
呟いて、アルザスは起き上がろうとする。
力が入らない。それでも、アルザスはやっとのことで、木にもたれながら立ち上がる。
自分が行くまで、アジトは持つかな そんなことを考えながら、アルザスは出来るだけ急いで、アジトへの道を、全力でゆっくりと歩き始めた。
序
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(C)Nighthawk 1999